今度の 石田衣良さんの小説は、声優・アニメと中国が舞台――。
ヒロインは中国から日本の声優学校へ入学してきた心心(しんしん)。
彼女を中心に、声優学校の日常やアニメ業界の舞台裏、そして膨張し続ける 中国の経済の模様が紹介されていく。
さすがに石田衣良さんは、皆が知りたがっているトピックをきちんと 押さえてくれてる。
いま最もモテな職業は女子アナよりも 声優だろうし、停滞する日本経済の中では、アニメだけが海外からの評価も高いカテゴリだ。
そして 中国も アニメ業界 に参入してものすごい勢いで追い上げている。
ちなみにこれは、中国でアニメ会社を作って! と言われたアニメーターのコミックエッセイ――。
新聞ではよくわからない現場の空気が石田衣良さんの小説からは伝わってくるのだ。
これはもう 江戸時代の講談みたいなもの。
島耕作シリーズがビジネス情報漫画 なら、石田衣良さんの小説は池袋ウエストゲートパーク をはじめとして、トピック解説小説だ。
池袋ウエストゲートパーク シリーズ 最新巻はこちら――。
「心心」前半で印象的だったのは、声優たちが1日に数十回も自分の声をボイスコーダーに吹き込んで、聞き返してはチェックするってことだった。
バレリーナのバーレッスンのような地道なレッスンを、華やかに見える声優たちも毎日続けているのだ。
後半で印象的だったのは中国・上海の勢いのある様子。
ただ 格差は広がっているようで、特に 都市と農村とでは戸籍自体が違うとか。
都市の富裕層は、農村 出身の貧困層を「素質(すーちー)」が悪いとバカにする 傾向 もある。
それでも、その躍進っぷりは今の日本人からすると目がチカチカしてしまうほど。
なかでも心心の叔父にあたる人物描写がスゴい。
実を言うと心心は、世界第二位のスマートフォン メーカーのお嬢様なのだが、社長である父親と叔父とが社内で対立しているのだ。
しかしこの叔父も、心心や心心の父親を憎んで追放しようとしてるわけでもなくて、愛情を感じてもいるようだけど、自分の欲望は剥き出しにして隠そうともしない。
この強烈な自己肯定感は今の日本人には見受けられない。
台湾について、中華料理店があるから 中国だ、と発言した某報道官がいたけど、あれって案外本気でそう思ってたりして。
ちょっと怖い……。
今の日本には様々なダークサイドがある。
某カルト宗教とか、新型コロナの医療現場や学校現場とか、東京オリンピックの裏側とか、中国と台湾と沖縄とか、ロシアと北方領土とか、ホントにいろいろ。
どうも 新聞では真っ正面から取り上げることが難しいようなので、小説、フィクションという形をとって、暗黒面の内側を我々読者教えて欲しいと思う。
石田衣良 さんが次のトピックに何を選ぶか 注目だ――。
【プロフィール】
節約系底辺FIRE(セミリタイア)目指すナマケモノ&寝そべり族。
寝そべりながら年100冊の本を読み、年1,000冊のマンガを読む。
片道一時間の自転車通勤は10年を突破。
食事は肉・卵・チーズのMEC食でメガビタミン実践中。
料理はレンチン&時短料理。。。