どんな不幸な生い立ちでも、本人さえしっかりしてがんばれば浮上できる、て無邪気に信じていた時代は、思えば牧歌的な時代だったのだ。
本書は自伝的コミックエッセイ――。
作者の 上村さんは、美しいけれどネグレクトな母親に支配されて機能不全な家庭で育った。
母親は金銭的に依存するだけではなく、自死することによって上村さんにリカバリー不能なトラウマを残す。
「母親の呪い」だ――。
もちろん上村さんも死に物狂いで努力した。
ダイエットし、ファッションに気をつかい、英会話を学び、有名企業へ転職し、理解あるイケメン年下の彼氏も作った。
「育ちのいい子」になんて絶対に負けない
しかし、無理に無理を重ねて作った完璧な人生も、老化の足音によって終わりを告げる。
よく考えてみたら人は誰でも老いるのだ。
どこかで自分と折り合いをつけなければ年を重ねといくことができない。
自分の場合、橘玲さんの本をよく読むのだが、橘さんは 今の時代を「無理ゲー社会」「ディストピア世界」としながらも「才能がある者にとっては ユートピア」などと言っている。
しかしこれは「若く」才能がある者、と補足するべきなんだろう。
人生100年時代、どんなに才能があり、どんなに美貌を誇っても、いずれは老いるし社会的弱者になる。
そして長い黄昏の時代を過ごす。
(さもなければ「老害」となる)
人生は生き続ける以上、「負け戦」になるゲームのようだ。
だからこそ親によるハンデが重くなる。
ハネ返そうと死に物狂いで努力しても、疲れて老化によってトドメを刺される。
なんて、シンドいんだろう――。
「親ガチャにハズれたけど普通に生きてます」でも取り上げられていたけど、自分の人生がパッとしないのを親のせいにする人って意外と多い。
上村さんも、最初はそういう人をバカにしていたけど、最後の方では全否定することなく受け止めるようになっていく。
自分もそうならなければ――。
それだけ 親子関係の闇は深いのだ、と読んでわかった。
どんな事情があるかわからない。
そう思い知らされた。
最後に――。
作者 プロフィールを見ると、上村さんは近代史に興味があるらしい。
端正な絵を描く人だし、編集者さんは、ぜひ彼女に近代史ものを描かせてあげてください。
自分の場合、自称 歴史好きだけど、近代史は、当時、授業でさっぱりやらなかったせいか、いまいちよくわからない。
上村さんのような人が描いてくれると助かるのだけど――。
【プロフィール】
サイドFIRE(セミリタイア)目指す寝そべり族。
寝そべりながら年100冊の本を読み(Kindle書籍読み上げで耳活)年2,000冊のマンガを読む。
片道一時間の自転車通勤は10年を突破。
食事は肉・卵・チーズのMEC食。
調理はレンチン一択。
水出しコーヒーとグリーンズフリー(ノンアル)を愛飲中。。。