「図解――」でも「地図でわかる――」でもなく、「ランドパワー」も「シーパワー」も出てこない地政学本――。
高校生と中学生の兄妹がアンティークショップ店長(通称カイゾク)から歴史の本質・ニュースの裏側についてレッスンを受けることになったが……。
「13歳からの地政学」が画期的なのは、ほとんど地図が出てこないところだ。
たいていの地政学本には、やたらと 地図が出てきて図解したがる。
読者サービスのつもりかもしれないけど、情報てんこ盛りすぎて、ごちゃごちゃ、よくわからない。
「13歳からの地政学」は、「数式を使わない理系本」のようだ。
本好き、物語好き、エンタメ好きには、むしろなじみやすい。
わかりやすくて、おもしろいだけではなくて 内容も深い――。
なかでも「日本のそばにひそむ海底核ミサイル」は印象的。
これまで何冊か地政学本を読んできたけど、核ミサイルについて正面から取り上げた本ってなかった気がする。
恥ずかしながら、「13歳からの地政学」を読むまで、世界で核保有国は何カ国あるのかも知らなかった。
核兵器は①原子力潜水艦②海中からミサイルを 発射する能力③深くて安全な海、の3つをそろえて はじめて最強のアイテムになる
これはまるで「沈黙の艦隊」の世界ではないか――。
断片的な知識がつながった瞬間、フィクションなエンタメと現実の世界がリンクした瞬間の快感を味わうことができた。
同時に中国が南シナ海になぜあれほど こだわるのかもようやく理解できた。
核ミサイルの話だけでなく、よく分からなかったニュースの解説が次々と出てくる――。
・アフリカのように 民族問題が大きい国では、なかなか 選挙や 民主主義が機能しない。
・日本がアメリカから原爆を落とされてもアメリカを恨まないのは、戦争を一種の自然災害のようにとらえたから。
・世界では韓国のように被害者の国が圧倒的に多く、かって加害者だった 日本は少数派に属するのでなかなか理解を得にくい。
・ロシアのように地球温暖化を前向きにとらえる国もある(北極の氷が溶けて北極回り航路が活用できるから)。
などなど――。
何より素晴らしいのは、地政学本には必ず出てくるランドパワーやシーパワーなどの専門用語を使わず、作者が自分の言葉で語りかけてくれることだ。
「13歳からの地政学」が初めての単行本のようだけど、ぜひ次回作 を出版して欲しい!
もし地政学の本でオススメを聞かれたら真っ先にこの本を紹介したい――。
●その他、これまで読んできたなかで分かりやすかった地政学本
【プロフィール】
サイドFIRE(セミリタイア)目指す寝そべり族。
寝そべりながら年100冊の本を読み(Kindle書籍読み上げで耳活)年2,000冊のマンガを読む。
片道一時間の自転車通勤は10年を突破。
食事は肉・卵・チーズのMEC食。
調理はレンチン一択。
水出しコーヒーとグリーンズフリー(ノンアル)を愛飲中。。。