これは西部劇ではない西部開拓史だ――。
アイルランドの領主の娘アメリアは、飢饉と決してぬぐいきれない過去によりアメリカへ渡る。
大富豪になるため、ゴールドラッシュのカリフォルニアへ向かうが――。
ゴールドラッシュの時代と言うと、どうしても西部劇のガンファイトを連想してしまうけど、「方喰と黄金」はガンファイターが出てこない西部開拓史だ。
とはいえ当時のニューヨークは無法者がはびこる街だったし、ケンタッキーでは奴隷が悲惨な目にあっているし、大陸を西から東へ横断する鉄道はまだ途上だった。
主人公のアメリアはまだ少女で、いつも栄養失調気味のせいか、たまに滋養のあるものを食べると鼻血を出す。
けれども持ち前の前向きさで現状を乗り越えていく。
子供の頃読んだ「ながくつしたのピッピ」を思い出させる。
アメリアは少なくとも当時のアメリカで一番強い女の子だったのではなかろうか。
この前向きさがトラウマによるもので、そのトラウマゆえに生き延びてきたというのは皮肉な話。
だからアメリアは、どんなに人に笑われようと、ブレずに大富豪を目指す。
実際、後世の自分たちから見るとちょっと意外な気がするけど、アメリカへ移民してきた人たち全部がゴールドラッシュ目的ではなくて、むしろ少数派。
それぞれ適当な場所を見つけたら「ここらで良いか」と腰を落ち着ける。
アメリアの方がマイノリティ。
これがリアルな開拓史なのだなあ。
ところで、物語とは関係ないけど、アメリアの瞳は「◎に・」で、アップになると三重丸に「・」になる。
初めて見るタイプの「瞳」だ。
大富豪って言う大それた目標に突き進む、なかば「イッちゃってる」アメリアには不思議と似合ってるのが何ともおかしい。
今回は5巻まで読んだが、最新巻は6巻――。
アメリアの旅はまだまだ続く。
当分は楽しめそう。
【プロフィール】
サイドFIRE(セミリタイア)目指す寝そべり族。
寝そべりながら年100冊の本を読み(Kindle書籍読み上げで耳活)年2,000冊のマンガを読む。
片道一時間の自転車通勤は10年を突破。
食事は肉・卵・チーズのMEC食、調理はレンチン一択、水出しコーヒーとグリーンズフリー(ノンアルコールビール)を愛好中。。。