「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」で有名になったブレイディみかこさんの新刊だ。
今度は、お得意の子どもたちではなく、なんと「おっさん」。 イギリスの労働者階級のおっさんの生態をビビッドに描いている。
しかし、この作品を作者に書かせた編集者は只者ではないな~。
おかげで、階級社会と言われるイギリスの実態やEU離脱のいきさつが「おっさん」目線のおかげで身近になった気がする。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で青竹のようにフレッシュな少年たちについて書きながら、そのまったく同じ時期に、人生の苦汁をたっぷり吸い過ぎてメンマのようになったおっさんたちについて書く作業は、複眼的に英国について考える機会になった。二冊の本は同じコインの両面である。
それにしてもEU 離脱――。
日本人から見ると、まさか離脱するとは思ってなかっ たのと、いつまでごちゃごちゃと揉めているのか、と疑問に思わずにはいられな い。
しかし、まさか本当に離脱に票が集まると思ってなかったのはイギリス人も同じようで、何となく引っ込みがつかなくなってしまったようだ。
そして、このEU離脱の問題が夫婦喧嘩や親子喧嘩に発展してしまうのは、いかにもイギリスらしい。
例えば作者夫婦の友人の「おっさん」は、EU離脱に賛成を表明した結果、若くて稼ぎの良い女房から離婚され、 とんびが鷹を産んだような出来の良い息子からは「正気かい?」とディスられる。
しかし、これは世代間の対立にとどまらず、 たいへん根深い問題なのだ。
EUに所属する限り、豊かな国を求めて、難民・移民がやってくる。
労働者階級のおっさんたちは職を奪われ、おっさんたちの母親が病院へ行っても、英語を話せない外国人の診察に手間取って、なかなか自分の番が回ってこない。
難民・移民に「NO!」を突きつけると、 若い世代からは「差別主義者!」と糾弾される。
おっさんの居場所はどこにもない。
ただでさえパブでビールをがぶ飲みし、アル中になりがちなおっさんは余計に肩身が狭い。
ちなみにイギリスの若い世代はアルコール離れが進んでおり、ジムへ通ってスムージーを飲むのが流行っているそうな。「分断」はここでも進行中だ。
こうしたイギリスのおっさんたちは、アメリカだと、トランプ大統領に投票する人たちに重なる気がする。
このあたりは同時期に池上彰ものを読んでいたので分かりやすかった。併せてオススメ!
最後に、「おっさん」の面白エピソード――。
イギリスでも「こんまり」はスパークしているようで、家に祈りを捧げてから断捨離に励むこんまりさんは、「禅」や「東洋」ファンのおっさんたちに大人気のようだ。イギリスの労働階級のおっさん、憎めない――。
【プロフィール】
夢とか夢中になれることは特に無いので、嫌いなこと、やりたくないことを回避するライフスタイルと、がんばらないためのライフハック がテーマ。
空いた時間はKindle読み上げで本を聴き(週1~2冊)漫画を読んでいく生活(週50冊)。
・片道1時間の自転車通勤中
・食事は糖質制限中。MEC食&高脂質食。ボトルでプロテイン・EAA&メガビタミン。
・ホットクック 1.0Lで自炊中
・服は制服化済み
・住まいは断捨離してミニマリストへ
・マンガと歴史好き
(特に世界史へ進攻中)
これから、やりたいこと――。
・英語で読み書き
・古武術介護
・小笠原流礼法
・楽天ポイ活
・積み立て投資