長年連載をやっていて、すっかりメタボな中年漫画家になった作者が、いきなり白河に山を買って自給自足を目指すドキュメント漫画だ。
ほとんど準備なしにいきなり飛び込んでいくところがすごい。さすが漫画家だと言ったら怒られるだろうか。
最初奥さんは野グソ生活に耐えられずに別居生活だったくらいだ。
それでも作者はチェーンソーを振り回し、ユンボを乗り回し、山を整地して、丸太小屋を建て、サウナ小屋を作り、水洗トイレ小屋作り、ピザ窯を作り、炭焼き小屋を作り、ツリーハウスもどきの丸太小屋まで作ってしまう。
その合間には釣りをして、自家製の竿を山の竹で作り、カヌーまで作ってしまう。
もちろん自給自足に欠かせない畑もやるし、味噌も作るし、鶏を飼って卵や鶏肉を消費したりもする。
この漫画は全10巻で10年近くを一気に駆け抜けるのだが、読んでいるとあれよあれよという間に小さな村が出来上がってしまったような錯覚さえ受ける。
作者は時々誰かに習いに行ったり、友人に手伝ってもらったりはするけれど、作業はほとんど一人で行う。この漫画を読んでいるとチェーンソーとユンボがあれば何でもできてしまうような気がしてしまう。
もちろんこれは錯覚。作者のバイタリティの賜物であり、手の皮のマメを何度もつぶす毎日があったからのことだ。
こういう自分も憧れていてやってみたいと思ってはいるけれど、とてもじゃないけど無理だと諦めているようなことを、凄まじい行動力でさっさとやってしまう人には無条件に憧れてしまうし、その人が描くドキュメント漫画は文句なしに面白い。
面白い面白いと読みながら、読むたびに自分にはとても無理だぞと思ってしまうあたりが切ないけれど……。
興味深かったのは東日本大震災の時のエピソード。
作者が住んでいる白川は福島に近いせいか、自衛隊のヘリがよく真上を通っていたらしい。
震災が起こった時は、多くの人と同じようにラジオつけていたけれど、実際に何が起こっているのかを音声だけでは想像できなくて、しまいこんでいたテレビを引っ張り出したという。
確かに自分も、震災の時は、最初は何が何だか分からなくて、あの津波の映像を見て初めて事の重大さを認識したのだった。
今自分はテレビを見ない日常生活を送っているけれど、災害など大事件の時のために、ラジオだけでなくテレビも確保しておいた方が良いのかもしれない。インターネットが必ずいつも使えるというわけではないから。
作者も、内部被ばく検査を受けたり、山菜などの山の恵みを食べて大丈夫なのかどうかはかなり葛藤していたようだ。
東日本大震災や台風19号や新型コロナウイルスなど、以前には思いもしなかったような災害が降りかかってくることが増えてきた。
そういったこととは無関係に山奥で暮らすということに憧れていたのだが、全く無関係というわけにはいかないのだな……。
そういえば山奥ニートの人たちも、住んでいる和歌山も、よく台風が直撃するので、それなりに大変なようだし。災害のリスクについては都会も変わらないと割り切っているようだが……。
漫画の話に戻ると、是非続編を期待したい。度々畑のじゃがいもがイノシシの被害にあっていたようで、そろそろ猟師に挑戦するのかなというところで終わってしまったので。
猟師漫画は街に住む人間にとっては非日常で、だからこそハズレなし。どれも面白い。
是非、守村版ハンター編を読んでみたい。
【プロフィール】
夢とか夢中になれることは特に無いので、嫌いなこと、やりたくないことを回避するライフスタイルと、がんばらないためのライフハック がテーマ。
空いた時間はKindle読み上げで本を聴き(週1~2冊)漫画を読んでいく生活(週50冊)。
・片道1時間の自転車通勤中
・食事は糖質制限中。MEC食&高脂質食。ボトルでプロテイン・EAA&メガビタミン。
・ホットクック 1.0Lで自炊中
・服は制服化済み
・住まいは断捨離してミニマリストへ
・スマホはiPhoneからPixel 3a XL へ移行
・マンガと歴史好き
(特に世界史へ進攻中)