唐突だけど読んでみた。
読んだ理由は、もちろんチェーザレボルジアだ。
もともとチェーザレには疑問があって、それは、なんでこんなに、もてはやされているんだろうってことだ。
こちらも読んでみたけれど、まだ物語全体の前半部分ぐらいなせいか、いまいちよくわからない。
あとがきなどを読んでいると、どうやらチェーザレが注目されるようになったのは、マキャヴェッリが「君主論」の中でチェーザレをお手本として取り上げたのがきっかけだったようだ。
かの塩野七生先生もマキャヴェッリを通じてチェーザレボルジアを知り、例の作品を書いた。これで日本人がチェーザレを知るようになったわけだ。
そんなわけで、「チェーザレ 破壊の創造者」は最新刊まで読み切っていないけれど、「君主論」を読んでみたわけだ。ただし、漫画で。幸い、図書館で借りられたし。
さて、この君主論。漫画版で読んだのは、少なくとも自分にとっては大当たりだった。
この漫画版の構成は、初めから3/4ぐらいまで、当時の中世イタリア状況のダイジェスト版なのだ。残り1/4になってから、ようやく君主のためのハウツーが出てくる。
ビジネス本のようなノウハウを求めていた読者には肩透かしかもしれないけど、歴史ものを読みたい自分にとっては、むしろ、むっちゃありがたい構成だった。
ちなみに、念のためウィキペディアの「君主論」の項を読んでみたところ、この構成はやはり漫画版ならではのものだった。
チェーザレを取りまく中世イタリアの歴史を分かりやすくまとめとくれた漫画版に感謝!
中には、このミケロットって、「チェーザレ 破壊の創造者」に出てくるチェーザレ片腕のミゲルのことか? あんなにヘタレで丸々として福々しかったジョヴァンニ様がこんなに立派になって……などのお楽しみもあった。
もちろん、チェーザレの悲劇的な結末も知ってしまったけれど、全ての歴史ものはネタバレ済みなので、これはもうしょうがない。
どうして、そうなってしまったのかを詳しく知りたいので、むしろ、これから読むのがもっと楽しみになった。こちらは最新刊――。
それと、マキャヴェッリがなぜ君主論を書くに至ったかの経緯も面白い。要は就活の一環。現状イタリアを概括して統治者はどうあるべきかを書いたレポートだったわけだ。
冷酷な権力者のためのハウツー本かと思いこんでたけど拒否反応が消えた気がする。「狐の狡知と獅子の勇猛さ」だけでも無かったし。むしろ現代から見ると、ごく常識的なことばかり。
それよりは、いかに当時のフィレンツェが先延ばしで事なかれ主義で優柔不断だったか……。まぁ、これは現代でも「あるある」だけど。
それにしても、結局、マキャヴェッリの就活は上手くいかず、チェーザレも目的を果たすことは出来なかった。あれほどの才能、ヴィルトゥに恵まれていたというのに。しょせん、運不運なのか、と思いたくもなってしまう。
ところで、漫画版の君主論を読んだ後、「チェーザレ 破壊の創造者」の第7巻を読んだ。
どちらかと言えばインターミッション的な巻だったか。チェーザレと大学教授との問答により、ローマ帝国からのヨーロッパ史を通じて、皇帝と教皇の軋轢の歴史についてを一気に語った。
取り上げられたのは、カノッサの屈辱の真実、封印された皇帝の墓の謎、ダンテの『神曲』の秘密など。
チェーザレの物語は全く進んでないけど、これはこれでとても面白かった。なんか、スゲぇ作品だ。監修者もダンテが専門の学者さんだし。
ガラにもなくダンテも読んでみたくなった。もちろん漫画で――。