吉本ばななさんの小説やエッセイを読むたびに、これは「おばあちゃんの智恵」だなあ、と思ってしまう。
作者には「まだ、そんなトシではない」と怒られてしまうかもしれないが。
下手な、自己啓発本やビジネス本、ハウツーマニュアル本を読むよりは、よっぽど「効く」ような気がする。
しかも、身体に負担の少ない、薬草や漢方薬のような。
そういえば、薬草茶を扱う主人公の小説もあったなあ。
「自分であること」
ばななさんも、生きづらい思いを抱えてる人に向けて書いていきたい、と発言してる。
「人生のコツ」や自分が得たノウハウを公開していきたい、と。
本書でも、〇〇の法則でもなく、勝利の方程式でもなく、ごく普通の人だけれど、充実した人生を送ってる友人のエピソードが紹介されている。
驚くほどの「ゆるさ」と「人を安心させる美しいスペース」を持った友人の話だ。
人間離れした努力や行動力を持った人の話は感心はするけど、ロールモデルにはならない。
普通だけど、なぜか上手くいってる人の話こそ聞きたいものだ。
教わったこと
老いと死を予感させるペットとの暮らしを描いた「「だんだん」の味わい」では、「その時が来るまでの時間を少しずつ割っていって、しっかり幸せを味わう」と書かれていた。
理不尽で、どうしようもないことに対して、どうやって気持ちの整理をつけていけばいいのか。
ばななさんの作品から、教わったような気がする。
嵐の避難場所
ばななさんは、対談だったか、インタビューだったかで、自分の本当に伝えたいことを、バリエーションを変えながら書いていきたい、生きづらい人たちへ届けたい、てなことを言っていた記憶がある。
だとすると、芸術的な作品を作り続ける職人のように、魅力的な作品群を、これからも書き続けてくれそうだ。
そして、読者は、読み続けていくことができる。
せちがらい世の中にうんざりしたときには、ばななさんの小説やエッセイに緊急避難することができるのだ。
本との話:ガイド
本と読書についての本音の話。。。