絶対的ストライカーの主人公よりも、サッカー戦術よりも、地域のサッカークラブ運営の方がドラマティックなのかもしれない――。
主人公の中島は市役所職員。
なぜか地元の弱小クラブへ出向となる。
ボランティアスタッフの熱意に引きこまれて、サッカークラブ運営にのめりこんでいく中島だが……。
ボランティアスタッフに後援会に地元商店街。
パブリックビューイングに30万円もかかるとは知らなかったな~。
サッカークラブ運営を通じて街づくりに目覚めていく中島の変貌っぷりがすごい。
やがては地方財界人(変人?)と知遇を得て、大企業本社移転などとデカい話も出てくる。
実際、新型コロナウイルスでリモートワークが注目されて、淡路島へ本社移転した大企業が話題になった。
漫画の世界だけの夢物語ではなくなってきているのがリアルに感じられる。
サッカーと言えば、サッカー漫画でしか知らないし、テレビ観戦すらしない自分だが、サッカー専用スタジアムでのサッカー観戦がいかに迫力があるかは伝わってきた。
一度ぐらいは地元チームの試合を観てみたくなったな~。
さらに、うらやましいのはドイツ。
作品でも紹介されるのだが、サッカーリーグは何と12部まである。
田舎町でも芝のグラウンドが当たり前で、サッカーだけでなく、スポーツを楽しむ権利が国民に与えられて当然! なのだ。
一時期、日本のサッカー選手がよくドイツへ行っていたけれど(今も?)、こんな恵まれた環境なら無理もない。
自分も地元の芝グラウンドや森の中の専用スタジアムでサッカーを楽しみたくなってしまう。
作者の能田さんはサッカー大好きのようだけど、日の当たる世界だけでなく、脇役にスポットライトを当てるのが好みのようで好感が持てる。
中でも、日本代表の料理人がアウェイで衛生面に意識の低い料理人に苦労する話がおもしろかった。
考えてみたら、料理人をすべて日本人でまかなおうとしたら、金がかかってしゃーない。
現地スタッフを使ってやりくりするしかないわけだ。
作者の能田さんには、2部チームの女子サポが全国のスタジアムでグルメを楽しむ漫画もある。
気楽に読める楽しい漫画だけど、2部チームの運営スタッフが集客のために、これほど努力を重ねているのか、と驚かされる。
もはやビジネス漫画ではないのか?
全5巻――。
現在、1~2巻はKindle unlimited 読み放題で読める。
能田さんには珍しく選手が主人公のサッカー漫画もある。
主人公カジの武器は何とスローイング!
ドライブシュートでもサッカー戦術眼でも無いのだ。
2部リーグの弱小チームを舞台としているのも、この作者おなじみだ。
編集部の打ち切りに対してSNSで存続を呼びかけて回避するなどしぶとく7巻まで続ける。
J2の貧乏クラブを長年応援し続けてきたので、かっこう悪くても諦めずに生きのびる精神が身についたそう。
作者と作品世界が一致してるな~。
能田達規のサッカー漫画は地味だけど、ぜひオススメしたい。
普通のサッカー漫画に飽きた人には特に。
オルタナティブなサッカー漫画があることを知るだろう。
【プロフィール】
サイドFIRE(セミリタイア)目指す寝そべり族。
寝そべりながら年100冊の本を読み(Kindle書籍読み上げで耳活)年2,000冊のマンガを読む。
片道一時間の自転車通勤は10年を突破。
食事は肉・卵・チーズのMEC食。
調理はレンチン一択。
水出しコーヒーとグリーンズフリー(ノンアル)を愛飲中。。。