漫画を描くという作業はこれほどに大変なものだったのか――。
今となってはベテラン漫画家の川三番地さん。
「あしたのジョーに憧れて」は若き川三番地さんがちばてつやプロダクションでアシスタントをつとめた時の物語。
ちばてつやさんはタイトルにもなった「あしたのジョー」をはじめ、「おれは鉄平」「のたり松太郎」を描いた「漫画界の太陽」「漫画界の良心」だ。
川三番地さんがちばてつやプロに入った時は、ちょうど「おれは鉄兵」と「のたり松太郎」を描いていた時期。
どちらも読んだことのある作品だ。
このシーンのこのコマは、こんな風に描かれていたのか、こんなに描くのが大変だったのかと、懐かしく思いながら、しかも驚きながら読んでいった。
「あしたのジョーに憧れて」は、トキワ荘の物語のような友情物語ではなくて、アシスタントが必要なスキルを身につけていくところにフォーカスしている。
地味だけど、アシスタントが覚えなければいけないテクニックを、これでもかというぐらいに細かく細かく描写していくのだ。
原稿へのスタンド光の当て方、インクの壺の置き場所、スクリーントーンのきれいな削り方、カッターの刃の当て方、カッターの刃の折り方まで――。
ちなみに、カッターでスクリーントーンをきれいに削れている時は音で周りに分かる。
すごい世界や……。
漫画家の漫画はいくつかあって、アシスタントも大変だってことは、うっすら知っていたつもりだったけど、さすがにここまでとは思ってなかったなぁ。
グラウンド芝生の模様をペン先で描くため、電動歯ブラシにペン先をつけてダダダっと音を立てて描いていくシーンは、日本のものづくりの原点みたい。
ペンの圧力で爪に年輪ができていくエピソードは凄まじかった。
クールジャパンは漫画家の先生だけじゃなく、このような無名のアシスタントたちによって支えられてきたんだなぁ。
しかも、「あしたのジョーに憧れて」で描かれているアナログなスキルは、デジタル化によって、もはや過去のテクニックとなってしまっている。
今やタブレットがあればリモートワークのアシスタントと漫画が描けてしまう時代になってしまったのだ。
なんか、せつない……。
今回は2巻まで読了――。
全3巻なので、後もう一冊楽しめる――。
【プロフィール】
サイドFIRE(セミリタイア)目指す寝そべり族。
寝そべりながら年100冊の本を読み(Kindle書籍読み上げで耳活)年2,000冊のマンガを読む。
片道一時間の自転車通勤は10年を突破。
食事は肉・卵・チーズのMEC食。
調理はレンチン一択。
水出しコーヒーとグリーンズフリー(ノンアル)を愛飲中。。。