上杉謙信は女性だった?!
意表を突いた仮説で始まるこの漫画も、ついに10巻で完結――。
上杉謙信という人は、自分のような歴史好きから見ても不思議ちゃんで、何のメリットもないのになんで他人のために戦ばっかりしてるんだろう、よく部下がついて行ったよなあ、なんでしょっちゅう引きこもるんだ、いきなり職務を放り出したりしてるし……などなど、よくわからない人だった。
けれども、この漫画を読み、度々作品に登場する作者の口上を聞いていると、なるほど上杉謙信が女性であったら、けっこう辻褄が合うんじゃないかと思えてくるから不思議だ。
女の寺「善光寺」を手厚く保護したのもうなずける。
有名な肖像画だって、ちょい太めのおばちゃんに見えてくる。
この漫画は歴史シュミレーションものというだけでなく、意外な歴史ネタも盛りこまれているので、自分のような歴史クラスタを自認している者にとっても十分に満足のいくものだった。
例えば、上杉謙信は、越後産「青苧(あおそ)」の取引で、なかなか裕福だった、という指摘。
公共事業を民間に委託したりと経済政策にも取り組んでいた。
金に困っていなかったから、スポーツのように戦をやっていられたわけだ。
有名すぎる川中島の戦いだって、戦国時代史上もっとも死者が多かったことや、例のない遭遇戦であったことが念入りに描写される。
なるほどこれなら伝説の一騎打ちが起こってもおかしくないのかもしれない、と思わせてくれる。
作者は時々「ティータイム」を設けて、歴史に全く興味のない人達に向けて解説を試みてくれている。
「脱落者のかたこちらへ」では、こんな感じ。
ようするにですよ
私も全く知らんかったのだが
日本はまだまだ一つの国じゃなく
西と東の二つの国だったってこと
え? マジ?
これって戦国時代ものをずいぶん読んできた自分にとっても新鮮な指摘で、この言葉を聞いて初めて、上杉謙信が関東管領にこだわった理由や、謙信が足利将軍や朝廷から頼りにされた理由が分かった気がした。
同時に、旧体制を守ろうとする上杉謙信と、新体制を築こうとする織田信長との違いも鮮明になる。
歴史音痴を自称する作者、恐るべし!
これからも歴史ものは描いていきたいと言っていたので次回作が楽しみだ。
「今日ひたすら鎧ね」と先生に言われて、一日中鎧を描き続けるアシスタントさんも、お疲れ様でした。
【プロフィール】
サイドFIRE(セミリタイア)目指す寝そべり族。
寝そべりながら年100冊の本を読み(Kindle書籍読み上げで耳活)年2,000冊のマンガを読む。
片道一時間の自転車通勤は10年を突破。
食事は肉・卵・チーズのMEC食、調理はレンチン一択、水出しコーヒーとグリーンズフリー(ノンアルコールビール)を愛好中。。。