「穴太衆(あのうしゅう)」の全貌が明らかになった。
歴史好きだったら1度は耳にしたことがあるだろう、戦国時代に城の石垣を積む職人集団穴太衆。
しかも Wikipedia で検索するという味気ないものではなく、エンタメの中で楽しみながら知ることができたのだ。
自分にとってはど真ん中ストレートの小説だった――。
まずは、穴太衆の役割分担が細分化されてるのに驚く。
石積の専門、山から石を切り出す専門、石を運ぶ専門と分かれている。
そしてそれぞれ専門の技を磨いている。
主人公の匡介などは積方の専門。
100年に一度の天才で、石の声が聞こえる。
「次は俺を使え」、「この場所には俺を置け」と叫ぶ石の声が聞こえてくるのだ。
匡介はやがて穴太衆のトップ「塞王」の称号を手にすることになる。
誰にも落とせない石垣「最強の楯」を作ることによって、戦の被害に遭う民を救おうとする。
一方、穴太衆のライバルになるのが鉄砲鍛冶集団の国友衆だ。
「砲仙」国友彦九郎は、力のない女子供でも使える鉄砲を大量に作り、さらに一発で国を滅ぼす「至高の矛」を開発することによって、戦のない世の中を作ろうとする。
穴太衆・匡介と国友衆・彦九郎は何度か死闘を繰り広げるが、クライマックスでは大津城の攻防で激突する。
次々と新兵器で城の石垣や天守閣を崩そうとする国友衆。
矢弾が飛んでくる中で何度も石垣を積み直す穴太衆。
穴太衆は賽の河原で石を積み上げる子供のようだ。
積み上げた石はやってきた鬼に崩されてしまうのだが、それでも子供は石を積んでいくことしかできない。
「塞王」の称号が「賽の河原」を連想させるとしたら、こんな皮肉なことはない。
大津城の闘いは関ヶ原の前哨戦と言う地味な舞台だ。
城主・京極高次もマイナーな武将。
家柄が良いのが取り柄、プライド高そうなイメージだ。
豊臣秀吉に美人の妹を献上したことで出世したため「蛍大名」などと陰口を叩かれてもいる。
しかしこの京極高次がなんと魅力的に描かれていることか。
戦ベタだが憎めない愛すべき武将。
京極高次の妻お初も天然美人でほっこりさせる。
絶世の美女と呼ばれたお市の方の次女にあたる。
お市の方の娘は長女の茶々(豊臣秀吉の側室)や三女のお江(二代将軍徳川秀忠の正妻)ばかりがクローズアップされてきたけれど、お初の方もまた魅力的な人だったのだ。
穴太衆に京極高次にお初、そして大津城の攻防。
マイナーな人物にマイナーな舞台でも、これだけ面白い 小説が書けてしまうことに改めて驚く。
だとしたら、歴史には面白い物語 がたくさん 隠れているはず。
それは、これからも面白いです歴史小説がどんどん出てくる可能性があるということだ。
楽しみ!
とりあえず、作者の他作品を購入した。
戦国時代3悪人の一人、松永久秀が主人公。
まだ楽しみは続く――。
【プロフィール】
年2,500冊の漫画を読み、年に100冊の本を電子書籍読み上げ機能で聞き、片道一時間の自転車通勤を続ける日々――。
のんびり暮らすライフスタイルと、がんばらないためのライフハックがテーマ!
・食事は、たんぱく質ファースト。糖質制限中。MEC食継続中。ボトル飲みでプロテイン&メガビタミン
・電子レンジの時短料理で自炊中
・服は制服化&コンフォート命!
・断捨離後、ミニマリストに
・歴史と地理とニュースの社会科好き!
これから、やりたいこと――。
・英語で読み書き
・古武術介護
・小笠原流礼法