西村しのぶさんは華麗な恋愛漫画を描くイメージだけど、むしろ本領発揮してるのはお仕事漫画ではなかろうか。
今回は発掘業界が舞台。
主人公のなぎさは研究者の卵で、研究所や大学や博物館・美術館を縦断して活躍する。
西村しのぶさんが描くと地味なはずの考古学の世界もなんだかスタイリッシュに見えてくるから不思議。
主人公のなぎさにかかれば、発掘物の整理整頓にテプラを駆使することから始まってピンセットの先を研ぐことまで妙にオシャレに見えてくる。
スーパーカブに乗って現場へ行くことや、発掘作業の終わりに滝に打たれることや研究所にこもっている時はあえてマユを描かないことさえ、ステキなライフスタイルだ。
そしてこの漫画はライフスタイル漫画というだけでなく、純然たるお仕事漫画でもある。
なるほど発掘作業には金もかかるし優秀な人材も必要。
補助金をせしめるためには申請書を書かなければならず、学内政治も必要だ。
土地の所有者さんや建築会社の人たちとも上手くつきあわなければばならない。
考古学と言うと、はるか昔に思いを馳せるというイメージが強かったけれど、生臭い現実をクリアしなければ発掘作業などできないわけだ。
よく考えてみると西村しのぶさんは公務員(税務署)や農家(みかん)など、地味だと思われてた業界人をスタイリッシュに描いてきている。
誰も指摘しているのを聞いたことないけど、この作者ってお仕事漫画の名手なのではなかろうか。
もちろん「砂とアイリス」に恋愛要素が薄いわけでもなくて、それどころか登場人物たちは不倫しまくり二股かけまくりで良識派のひんしゅくを買いそうだけど、ちっとも汚らしく見えないのは、絵柄のせいというよりは、登場人物たちがみんな上機嫌で生活しているからだろう。
真面目だけど不機嫌な人より、不道徳でも上機嫌で生きてる人の方が見ていて楽しいもんなぁ。
全5巻――。
考えてみるとこの作者で完結したシリーズというのは珍しいのかもしれない。
大団円のラストシーンというわけでもないし、恋愛模様に決着をつけるわけでもないのが「らしい」。
やはり恋愛よりも、「ライフスタイル」と「お仕事」優先なのだ。
【プロフィール】
年2,500冊の漫画を読み、年に100冊の本を電子書籍読み上げ機能で聞き、片道一時間の自転車通勤を続ける日々――。
のんびり暮らすライフスタイルと、がんばらないためのライフハックがテーマ!
・食事は、たんぱく質ファースト。糖質制限中。MEC食継続中。ボトル飲みでプロテイン&メガビタミン
・電子レンジの時短料理で自炊中
・服は制服化&コンフォート命!
・断捨離後、ミニマリストに
・歴史と地理とニュースの社会科好き!
これから、やりたいこと――。
・英語で読み書き
・古武術介護
・小笠原流礼法