自分では全く縁のない世界だからこそ、本や漫画で読みたくなってしまうジャンル、それが登山だ。
鈴木みきさんの場合、徹底して初心者目線で描いてくれるので、とっつきやすい。
山ガール向けのコミックエッセイだけど、自分のようなへなちょこ男子でも楽しく読める。
一気に13冊読んでしまった。
発売日順に紹介しよう――。
「女子のための」とサブタイトルにあるけど、男子が読んでみても普通におもしろい。
「とりあえずこれだけあれば」とハードル低めにゆるい感じで描かれているのが実践的だ。
もともとゆるい感じの作者だけれど、かなりハードルを下げて山へ誘ってくれる。
「日帰り」
「山には文化系の人が多い」
「冬は雪の積もらない「低い山のベストシーズン」」
「ロープウェイ登山で高い山だって日帰りできるぞ」
ひとり登山のおススメは「一度登ったことがある山」。
一度来ていたはずなのに、一人だと全然印象が違う。
確かに旅行でもグループで動いてると、かなり人任せにして油断しきってしまうので、見ているはずのものも記憶に残らなくなってしまうよな~。
素人から見ると、山小屋に泊まっての登山って、かなり本格的でハードル高そう。
でも、作者の言うとおり、一気に山を上り下りするのではなく、分割して体力の消耗を防げるのだ。
そして、山小屋に泊まると、日の出と日の入りの時間に、山に居ることができる、静謐な時間を味わうことができる。
頂上は無理そうでも、ふもとに近い山小屋に泊まって至福の時間帯を過ごしてみたくなる。
山小屋の次はテント泊!
だんだんステージが上がっていく――。
それにしても、たとえばシュラフとマットなど、金さえ出せば、かなり高機能で快適なものが手に入るのだなぁ。
家の布団よりも、よっぽど寝心地良さそうな……。
そして、食も進化している。
アルファ米もクイックパスタも未経験だが、フリーズドライ方面は、さらにすごそう。
「ゆるキャン△」でも取り上げてたけど、フリーズドライのカツ丼さえあるらしい。
やっぱり割高なんだそうだが。
読んで驚いたのだが、作者の場合、最初から漫画家だったわけではなく、ねんど作家をやっていたら、「ふつうのイラストは描けない?」「マンガってどうですか?」と依頼が来たのだという。
山が呼ぶ縁――。
サブタイトルにあるように脱初心者編――。
山登りに慣れてきてそろそろマンネリかという時に読むのが良いようだ。
それにしても、登山道じゃない登山道「破線道」を歩く楽しみというものも存在するのだな。
山の中の道なき道を行く。
たしかに初心者には無理そう。
ちなみに、「チャート式 あなたの山ライフの行方」では、自分の場合、「沢登り」が向いていると出た。
「ほどほどにストイック。でも、ごほうびがないと動かない」
当たってるなあ……。
コミックエッセイで、相変わらず親しみやすい絵だけど、かなり本格的な内容。
なにしろ、地形図を買ってきて「磁北線」を自分で引いて、コンパスを使って、現在地や進行方向を知るのだ。
正直、難しかったし、今は GPS やスマホのアプリでいいのかな? と思わないでもないけど、今まであやふやだった山の地形について、ピークや稜線や尾根やコルや谷の区別がつくようになったのはありがたかった。
「岳」とか読んでいても、たまに??? てことが多かったので――。
山の名作――。
本格的な登山と言うと、山を登ることが第一で、食事と言えば、カップラーメンか、せいぜい飯ごうでご飯を炊いてカレーライスぐらいだろうと思っていた。
しかし現在の登山は違うようだ。
ガスバーナーの軽量化のようにツールは進化しているし、フリーズドライのように食材だって新しくなってる。
山小屋だってフルコースのメニューを提供してしまうのだ。
個人的には、「いらっしゃい。元気してた? ビール?」と出迎えてくれる山小屋は、ぜひ行ってみたい。
そういえば山と食をメインにしたシリーズの漫画もあったっけ……。
簡単で美味くて食材持ち運びの楽な料理。
かんたん自炊や時短料理の参考にも。
全イラスト、全カラー。
シンプルな絵に色鉛筆で塗った(?)素朴なイラストが楽しい。
歴史好きなので、「マンガで読む登山の大まかな歴史」が良かった。
レジャーとしての登山って、日本では意外と歴史が浅いのな。
意外と言えば、山小屋メニューの定番が、カレーではなく、実はラーメンだってのも驚き。
かえって作るの大変そうなのだが……。
日本人にとって特別な山、富士山。
驚くのは、登山をしてるわけではないけど、富士山には登ったことがあるって人がけっこういるってこと。
日本一高い山なのに、日本一チャレンジされてる山、富士山。
しかし、読むまで、富士山の登頂ルートがこんなにあるとは知らなかった。
一番ラクそうなこのルートで、山小屋をフル活用すれば自分でも、などと、一瞬、考えてしまった。
危ない、危ない……。
登山ではなく、移住。
山のふもとに移住した体験記だ。
でも、かたっぱしから山に登りまくるわけでも、自給自足の生活をおくるわけでもないのが作者の良いところ。
このユルさに救われる読者は多い。
少なくとも、自分はそう。
実際、作者にとっても「人生の中休み」的な移住。
今はすでに次の場所へ、北海道へ動いている。
登山と防災。
この組み合わせは目からウロコだった。
作者の新境地開拓か?
しかしよく考えてみると、登山と防災は重なる部分が多い。
少なくとも常日頃から山に登ってる人は、大地震や大型台風で避難することになっても、すぐに荷造りできそうだし、慌てずに動けて、判断も間違いなさそうな気がする。
特に作者の場合、防災に関する資格を取得中。
しかも北海道のブラックアウトを経験しているので説得力があった。
鈴木みきさんのコミックエッセイを一通り読んでみて、ずいぶんと山が身近になった気がする。
もちろん、コロナ以前からのステイホーム体質なので、いきなり山に登ってみよう、とはならないのだが。
ただ、山の麓まで出かけて行って、のんびりと山を眺めたり、ロープウェイで行けるところまで登って、展望台でビールを飲んだり、比較的低いところにある山小屋に泊まって、日の出や日の入りの静謐な山の時間を過ごしたり、そんなことをやってみたくなった。
本や漫画を読みふけっていて、ふと目を上げればそこに山がある、と言うのは、かなり素敵なこと。
実際に登っても、登らずにコミックエッセイを読んでいても、山は楽しい。
【プロフィール】
年2,500冊の漫画を読み、年に100冊の本を電子書籍読み上げ機能で聞き、片道一時間の自転車通勤を続ける日々――。
のんびり暮らすライフスタイルと、がんばらないためのライフハックがテーマ!
・食事は、たんぱく質ファースト。糖質制限中。MEC食継続中。ボトル飲みでプロテイン&メガビタミン
・電子レンジの時短料理で自炊中
・服は制服化&コンフォート命!
・断捨離後、ミニマリストに
・歴史と地理とニュースの社会科好き!
これから、やりたいこと――。
・英語で読み書き
・古武術介護
・小笠原流礼法