「ザリガニの鳴くところ」で一番魅力的なのは間違いなく主人公のカイアだ。
カイアは「湿地の少女」で「野生の少女」。
小さな子供の頃から海に近い湿地に一人取り残され、サバイバルして生き残る。
貝を採って金を稼ぎ、ボートのガソリンや生活必需品を買い、自給自足に近い生活を送るようになっていく。
やがて余裕ができると彼女は、湿地の鳥や昆虫などの生物を観察し、スケッチし、標本を陳列する。
そして研究者が一目置くような本を出版するようになってしまうのだ。
彼女は野生と知性を併せ持つ魅力的な女性だ。
そんな彼女は自然界の掟を誰よりもよく知っている。
だから生きるということにためらいがなかった。
タイトルの「ザリガニが鳴くところ」とは、「茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きてる場所」だ。
ここには善悪の判断など無用だということを、カイアは知っていた。そこに悪意はなく、あるのはただ拍動する命だけなのだ
カイアを見ていると、漫画版「風の谷のナウシカ」を思い出す。
漫画版はアニメと違って、かなり哲学的な作品になっていて、特に「生命とは何か」が大きなテーマだった。
自然を破壊し地球までを壊してしまう人類とは、間違った生命ではないか?
間違った生命は滅びなければいけないのではないか。
この命題にナウシカは「否!」と叫ぶ。
「生命は生命の力で生きている」と。
二人の生命観はよく似ている。
カイアを見ていて、もう一人思い出すのが「ピーターラビット」の作者、ビアトリクス・ポターだ。
この作者は面白いライフスタイルを送っていて、映画にもなっている。
今回、「ザリガニの鳴くところ」を読んだのがきっかけで、ポターの本も読んでみた。
やっぱりよく似ているし、個性的な生涯を送っている。
・ポターはイギリスの湖水地方がお気に入りだった。
(カイアは「湿地の少女」だった)
・キノコの研究者になろうとしたが女性差別により断念した。
(カイアは湿地の生物の専門家だった)
・ポターは自然を絵本に活かすことでベストセラー作家となった。
(カイアも本を出版することで在野の研究者となった)
・ポターは得た収入で湖水地方の土地を買って自然保護に努めた。
(カイアも本出版の収入で湿地の土地を買った)
・ポターはプライバシーを非常に大事にしていた。死んだ後は散骨するよう遺言したが、その場所は夫にさえ教えなかった。
(カイアも夫やごく一部の人を除いて社交することはなかった)
「ザリガニの鳴くところ」の作者はもともと動物行動学の専門家。
ポターのことも知っていただろう。
モデルにしたのかもしれない。
「ザリガニが鳴くところ」のカイア、「風の谷のナウシカ」、「ピーターラビット」の作者ポター。
自然と共に生きる女性は魅力的だ。
【プロフィール】
年2,500冊の漫画を読み、年に100冊の本を電子書籍読み上げ機能で聞き、片道一時間の自転車通勤を続ける日々――。
のんびり暮らすライフスタイルと、がんばらないためのライフハックがテーマ!
・食事は、たんぱく質ファースト。糖質制限中。MEC食継続中。ボトル飲みでプロテイン&メガビタミン
・電子レンジの時短料理で自炊中
・服は制服化&コンフォート命!
・断捨離後、ミニマリストに
・歴史と地理とニュースの社会科好き!
これから、やりたいこと――。
・英語で読み書き
・古武術介護
・小笠原流礼法
・沈没バックパッカー(外こもり?!)