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【司馬遼太郎】長編と短編とで印象が違う作品ベスト3!

 


司馬遼太郎短編全集を少しずつ読み進めていたのだが、ようやく最後まで読み終えることができた。

司馬遼太郎短編全集 全12巻 完結セット

司馬遼太郎短編全集 全12巻 完結セット

 

 

短編を一通り読んでみて改めて思ったのは、長編とは違った面白さがある、てことだ。

同じ人物を主人公にしていても長編小説と短編小説では視点が違っていたり、戦国時代や幕末時代という激動の時代に、英雄ではない無名の人がどう動いたとか、才能がありながら世の中に出ることがなく終わってしまった人たちにスポットを当てていたり。

 

今回は、その中で、長編小説でも短編小説でも主人公になっているケースの3作品を取り上げたい。

司馬さんは、戦争に負けた戦後の日本人を力づけたいという思いから、素晴らしい日本人がいた、こんな男たちがいた、とポジティブな面を長編小説に書く事が多かった。

 

けれども、同じ主人公で短編小説を書く場合は、客観的に、どちらかといえば辛口な視点で描くことがあった。

この二つを読み比べてみると、そのギャップが面白い。例えば他の小説家でも、短編小説を書いて、それをベースに長編小説へ膨らませるということがあるけれど、ほとんど同じ視点で書かれている。

長編小説と短編小説と、視点を変えて書き分けるのは、司馬さんならではの凄さというところではないだろうか。

 

さて、最初に紹介するのは、幕末の越後藩は長岡の産、河井継之助

短編全集では第8巻。タイトルは「英雄児」。

司馬遼太郎短篇全集 第八巻 (文春e-book)

司馬遼太郎短篇全集 第八巻 (文春e-book)

 

 

文庫本形式だとこちらに収録されている。

馬上少年過ぐ (新潮文庫)

馬上少年過ぐ (新潮文庫)

 

 

長編小説バージョンはこちら――。

峠(上) (新潮文庫)

峠(上) (新潮文庫)

 
峠(中) (新潮文庫)

峠(中) (新潮文庫)

 
峠(下) (新潮文庫)

峠(下) (新潮文庫)

 


河井継之助は、越後長岡藩を、勤王でも佐幕でもなく「中立」にしようとしたが、残念ながら失敗。

長編では、河井継之助が志半ばで死んでしまうシーンで終わっているので、その後の悲惨な状況は書かれていない。

 

でも短編では書いている。

河井継之助は、一人の男としては筋を通したけれど、藩の重役としては、無理な中立を保とうとして、無謀な戦争に藩を引きずりこんでしまった。

このため河井継之助が死んだ後も、わざわざ墓にやってきて鞭打つ人が多かったらしく、河井継之助の奥さんはいたたまれずに長岡から出て行ってしまったと言う。

 

英雄というのは、時と置きどころを天が誤ると、天災のような害をすることがあるらしい。

 

 

次に紹介するのはタイトルそのまんまの「千葉周作」、北辰一刀流創始者だ。

司馬遼太郎短篇全集 第七巻 (文春e-book)

司馬遼太郎短篇全集 第七巻 (文春e-book)

 

 

文庫本形式だと、こちらに収録。

新装版 宮本武蔵 (朝日文庫)

新装版 宮本武蔵 (朝日文庫)

 

 

長編はこちら――。

新装版 北斗の人(上) (講談社文庫)

新装版 北斗の人(上) (講談社文庫)

 
新装版 北斗の人(下) (講談社文庫)

新装版 北斗の人(下) (講談社文庫)

 


合理的な思想の持ち主で、古臭くて迷信的だった当時の剣術を近代的なスポーツに近づけた人だ。

体が大きくて悠然と見えるせいか、小説や漫画の主人公の「先生役」として出てくることが多い気がする。

「理想の師」歴史ランキングがあれば軽くベスト10には入るんじゃなかろうか。


こんな周作でも、短編では、のっけから、顔が異様に長いだの、お床がしつこい、などと散々な言われようだ。

他流派との抗争においても、かなり優柔不断な姿勢を見せている。

剣の腕も先輩の寺田五郎右衛門の方が優れている、と手厳しい。

(だが、誰にでも学びやすい剣の技術体形を作り上げた、と言う評価)

 


長編ではここまでシビアなことは書いていない。

言わば、田舎を出てきた無名の青年が自分の流派を立てるまでのサクセスストーリー。

最初に婿養子で入った師匠の家では苦労したけど、その後、一流を立て、家を出て、気立ての良い奥さんと再婚してハッピーエンド。

 

 

最後に紹介するのは、幕末の長州藩村田蔵六、別名、大村益次郎だ。

タイトルは「鬼謀の人」。

司馬遼太郎短篇全集 第九巻 (文春e-book)

司馬遼太郎短篇全集 第九巻 (文春e-book)

 

 

文庫本形式だとこちらに収録。

人斬り以蔵 (新潮文庫)

人斬り以蔵 (新潮文庫)

 

 

長編はこちら。

花神(上中下) 合本版

花神(上中下) 合本版

 

 


村田蔵六は、元々幕末時代の洋学者で、後に翻訳で得た知識を使い兵学者として鳥羽伏見の戦いを指揮した。

根っからの研究者で、およそ対人スキルのないコミュ障だった。


このあたり、短編では容赦なく書かれている。

と思っていたけれど、今回もう一度読み返してみたら、短編でも長編でもコミュ障に関してのエピソードはどちらもてんこ盛りだった。

さすがの司馬さんも村田蔵六に関してはかばいようがなかったのかもしれない。

長編においては、シーボルトの娘との淡いロマンスらしきものが書かれているのが救いかも。


関係ないけど、村田蔵六の話を読むと、いつも豆腐が食べたくなる。

村田蔵六、豆腐大好き人間。

人間味があるエピソードって、これくらいかも(笑)。

 

 

短編全集を一通り読んでみて、今思いつく3作を取り上げてみた。

よく探せば他にもあるかも。

 

それに司馬さんは、ある人物を主人公にして長編小説を書いている時は、基本的に良い面にスポットを当てているけれど、別の長編小説に脇役として登場させるときには辛辣なことを書いていることが結構ある。

こうした違いを読み込んでいくのも再読の楽しみだ。

 

司馬遼太郎短編全集、多分もう一周はすると思う。

司馬遼太郎長編全集も Kindle 版で出してほしいなぁ。

紙版ではもうあるんだから、出来ないことはないはずなんだけど……。

司馬遼太郎全集 第68巻 評論随筆集(全巻完結)

司馬遼太郎全集 第68巻 評論随筆集(全巻完結)

 

 


【プロフィール】

年2,500冊の漫画を読み、年に100冊の本を電子書籍読み上げ機能で聞き、片道一時間の自転車通勤を続ける日々――。


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