今回読んだ漫画はアパレルコメディー――。
サークル活動もせず、特に社交的でもないゲーマー女子高宮陽は、時給の高さにひかれてスーツ店「テーラー森」でバイトを始める(だから「テラモリ」)。
売上命の副店長にしごかれてスーツのことや接客について少しずつ覚えていくと同時に、副店長の平尾とは……。
そもそも、スーツなんて、女子から見たらワンパターンに見えるだろう。
それだけに細かいディティールについてはバリエーションがありすぎて覚えられないくらいだ。
実際、毎日ジャケットを着てる自分でさえ、ジャケットの襟の形なんて特に気に留めてもいなかった……。
スーツや革靴などのうんちくがこれでもかと出てくるので、読んでいるとメンズのビジネスファッションについて自然に覚えていく。
就職活動中の学生にリクルートスーツを見立てるシーンもあって、就活生にはとても参考になるだろう。
憂鬱な気持ちで就活マニュアルをやる気なく読むよりは、こちらを読んだ方が身につきそうだ。
しかし、印象に残ったのは、こうしたうんちく話よりもアパレルや小売店の厳しさ、接客業の大変さだった。
例えば途中から薬院という脇キャラが出てくる。
(第5巻の表紙、左から、平尾、高宮、薬院)
ぱっと見、善良系メガネ男子だが、その分、気が効かない。
丁寧な接客でお客からの評判もよく売り上げもよかった。
最初に勤めていた店では、店長とも良好な関係を築けて何の問題もなかった。
しかし、店を変わってから状況は暗転する。
丁寧な接客は時間をかけすぎということになり、それでいて売り上げがいいというのはやっかみの対象になる。
後輩やバイト生のために上司に口答えすれば、面倒がられて、上司だけでなく、かばったはずの後輩やバイト生たちにまで疎まれてしまう。これはツラい。
こうして薬院は平尾や高宮の店に移ってくることになる。
業績を上げられないので上司からいびられるというのは営業マンでもよくある話だけど、業績を上げているにも関わらずハブられてしまうというのは恐ろしい。
ビルのワンフロアが事務所になってるのと違って、店は小さく閉鎖的な「島」だからか。
そもそもスーツ店って、1日の売上をレジで精算するけれど、毎日毎日の売上ノルマが決まっているというのもすごい。
天気の悪い日なんてもちろん客が少ないから売り上げは下がるだろうし、台風や大雪の日なんかどうするんだろう?
おまけにこのレジがすっごい。
テーラー森はいくつかの支店を抱えているけれど、1日の売り上げをレジで精算すると、すぐにその場で店員一人一人の売り上げがいくらか分かるし、テーラー森全体での売上ランキングも出るので、自分が全体で何位なのかまで一目瞭然なのだ。
なんだか毎日毎日受験テストやってるようなもんだな。
作者はスーツ店勤務の経験があるので、エンタメ用フィクションを織り交ぜつつも、事実を元に描かれているのだろう。
う~ん。小売業が、ここまで苛烈だとは知らなかった。
漫画の中でも高宮が就職活動するエピソードがあって、父親から、小売業、BtoCは大変だから、BtoB、企業同士でモノやサービスのやり取りをする仕事の方がいいよ、とアドバイスされるシーンがある。
娘のためを思ってこう言いたくなるのは、よくわかるような気がした。
この漫画はもう、スーツやビジネスファッションに興味のある人はもちろん、就活生でサービス業、小売業、アパレル業界を目指してる人に読んでもらいたい。
「テラモリ」を読んでも、なお目指したい、と思える人は応援したいし、そういう人がいる店へ服を買いに行きたいもんだ。
なにしろ自分の場合、「服を買いに行くための服がない」タイプの人間なので。
このフレーズに共感出来る人は、こちらも――。
さて、高宮の就職活動と平尾との恋の行方は最終巻に持ち越される。あと、薬院のその後も――。
成長した高宮の輝くような笑顔がまぶしいラストシーンだ。
今なら、漫画アプリ「マンガワン」でも無料で読める。
【プロフィール】
面倒なこと、嫌いなこと、やりたくないことから脱出するライフスタイルと、がんばらないためのライフハックがテーマ。
Kindle読み上げで本を聴き、宅配レンタルコミック&図書館で漫画を読む生活。
・片道1時間の自転車通勤中
・食事は、たんぱく質ファースト。糖質制限中。MEC食継続中。ボトルでプロテイン・EAA&メガビタミン。
・調理は電子レンジがメイン。
・服は制服化済み。コンフォート命!
・住まいは断捨離してミニマリストへ(団地へ引っ越す?!)
・歴史と地理とニュースの社会科好き!
これから、やりたいこと――。
・英語で読み書き
・古武術介護
・小笠原流礼法
・沈没バックパッカー(外こもり?!)