NHK のラジオニュースを聴いていたら版画の贋作のニュースが何度か流れてきた。
おっ。これはまさに「ギャラリーフェイク」の世界ではないか――。
ギャラリーフェイクを経営する藤田は贋作専門の美術商。
裏では新作や盗品を扱い、ブラックマーケットにも詳しい。
美術界では鼻つまみ者だがアートに関する造詣は深く、実は義理人情にも厚い。
「ギャラリーフェイク」は「ブラックジャック」の美術版なのだ。
現実に起こった事件は、平山郁夫などの有名な画家たちの版画がデパートなどで売られていたが、その中に贋作が紛れ込んでいた、というものだ。
ラジオニュースを聴いていると、インタビューで、複製作りを44年間やってきたという人物が出てきたのだが曲者っぷりが凄まじかった。
インタビュアーの質問をさえぎって話し出すわ、いい年をした男性なのに「○○デス~(⤴️)」という喋り方をするわ、あまりにもベタすぎてテレビドラマでは使えないような悪役ぶりだった。
言ってることを要約すると、頼まれてやっただけで、その後のことは一切関知しない、ということであった。
しかし、この人、よくインタビューに応じたなぁ。
「ギャラリーフェイク」は、もちろん版画の贋作も出てくる。
一番印象的だったのは第4巻の「馬鹿印のバカ一」のエピソードだ。
版画とはそもそも、彫ってから刷るまでをやるもので、画家が描いた作品を別の人が彫って刷るのは「エスタンプ」と言うらしい。
実は版画として売られている物のほとんどはこのエスタンプのようなのだ。
バカ一は、エスタンプの天才で「裸の大将」山下清のような天然だ。
騙されて贋作に手を染めるのだが、空気を読まずに発言して騒動を引き起こしてしまう――。
このエピソードを読んでから、またニュースを眺めると、違った面が見えてくる。
ニュースでは「版画の贋作」ばかりがクローズアップされていてエスタンプについての説明は一切無い。
けれども、この版画、実はエスタンプ自体、画家の描いた絵を版画にしたもの、つまり複製だ。
それを画家のネームバリューで売ってしまう。
「プロフェッサー藤田」なら「美術界の組織的フェイクだ!」と断定しそうだ。
しかもこの版画(実はエスタンプ)、本人や遺族や許可を得た画商だけが扱うことの出来るもので、それ以外の人間が許可無く版画にすると「贋作」となる。
必要以上に勝手に刷られると価格のコントロールが出来なくなるから。
なにやら日本銀行が紙幣の発行量を調節してインフレ・デフレにならないようにしてるみたいな話だ。
そもそも、画家の絵の贋作ならともかく、画家の描いた絵を別の人が版画にしたものの、そのまた贋作ってのもなぁ……。
アートに興味の無いド素人の自分から見ると、絵を写真に撮って複製したものの方がマシに思えてしまう。
いったいどんな人が買うのだろうか?
それに、今回のニュースでは、画家ばかりが取り上げられていて、彫った人、刷った人、版画を作成してる人の名前は全くでてこない。
これでは贋作に手を染めたくもなろう。
ちなみにギャラリーフェイクでは、水墨画の贋作「相剥」のエピソードも出てくる。
相剥は、水墨画の厚手の紙を表と裏、薄い紙2枚に剥いで分けてしまうものだ。
裏にあたる方が墨などが薄くなるために価値が低くなるようだ。
言わば本物を二つに分けてしまう――。
ここまでくると、どこまでが真作でどこからが贋作なのか分からなくなってくる。
なんにしろ、今回の版画の贋作のニュース、ギャラリーフェイクを読んでいたおかげで面白く聴けた。
もし読んでなかったら何の興味も持たずにに聴き流していたことだろう。
最後に、このギャラリーフェイク、一度完結したけれど、その後、ぽつぽつと続編が出てる。
おかげで、うさんくさいアートの世界の表と裏をもっともっと楽しめるのだ。
最新巻はこちら。自分もまだ未読なので読むのが楽しみだ。
【プロフィール】
面倒なこと、嫌いなこと、やりたくないことから脱出するライフスタイルと、がんばらないためのライフハックがテーマ。
Kindle読み上げで本を聴き、宅配レンタルコミック&図書館で漫画を読む生活。
・片道1時間の自転車通勤中
・食事は、たんぱく質ファースト。糖質制限中。MEC食継続中。ボトルでプロテイン・EAA&メガビタミン。
・調理は電子レンジがメイン。
・服は制服化済み。コンフォート命!
・住まいは断捨離してミニマリストへ(団地へ引っ越す?!)
・歴史と地理とニュースの社会科好き!
これから、やりたいこと――。
・英語で読み書き
・古武術介護
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