デパートで接客していたけど、40歳になってから倉庫勤務になった独身、新(あらた)。 太目の彼女は柄にもなく高齢者バーのホステス、アララとして勤務することになる――。
以前、1巻だけを読んだときは、アラフォー女性のリボーンストーリーかと思っていたけれど、物語は、ブラジル移民となった日本人の歴史、日本の戦後史、東日本大震災後の福島の話など、どんどん重層的になっていく。
今回、全巻を通して読んで、ようやくストーリーが飲みこめた。これから読む人はぜひ全巻一気読みをオススメする。
新(あらた)が勤める高齢者バーの初代ママは「ジルバ」。すでに故人だ。戦前にブラジルへ移植し、戦後、日本へ引き上げた。
行き場所のない女たちを集めてダンスホールを作り、これが今、新(あらた)が務める高齢者バーの前身となった。
高齢者バーのホステスたち(70オーバー!)がジルバを物語り、新(あらた)が聞き役に回る。 ジルバの生涯を通してブラジル移民と戦後の日本が語られるのだ。
ブラジルの日本社会では、戦後、日本が負けたことは、しばらくの間は信じられなかったようで、日本が勝ったと信じる者「勝ち組」と負けたと思った者「負け組」とで諍いがあったり、「日本が勝った」と騙そうとする者がいたり、 日本へ引き上げようとする者にウソをついて金を巻き上げる者がいたりとかなり混乱した状況だったようだ。
正直、かなりヘビーな話で、ストレートにブラジル移民史を漫画化したものだったら途中で読むのがシンドくなったかもしれない。
新(あらた)の生活を眺めながら、時々、挿入される移民史エピソードを読むくらいでちょうど 良い。作者は先見の明がある人だったのだ。
最終巻、新(あらた)が告白を開くときの覚悟を決めるシーンがある。告白をする者は、告白を聞いたものを疎むことがある。墓場まで持っていこうと思っていた秘密を打ち明けてしまったからだ。聞いてくれたときは感謝するかもしれないが、時が経つと後悔するかもしれな い。それは聞かされた側にとっては逆恨みのようにも思えるのだが、新(あらた)はそれを受け入れようとする。 この物語の聞き役にふさわしい名シーンだった。
もう一つ、新(あらた)がつぶやく名シーンがある。「穏やかな人達の 穏やかな生活は ニュースにもならない」。弟夫婦が東日本大震災後、福島で始めた蔵カフェが上手くいくよう祈りながらつぶやく。
そう、ごく普通の人たちが、ごく普通に生活するエピソードは小説や漫画にはならない。「その女、ジルバ」は「ごく普通」の生活史をエンタメの漫画に持ちこんだ力作だった。
【プロフィール】
夢とか夢中になれることは特に無いので、嫌いなこと、やりたくないことを回避するライフスタイルと、がんばらないためのライフハック がテーマ。
空いた時間はKindle読み上げで本を聴き(週1~2冊)漫画を読んでいく生活(週50冊)。
・片道1時間の自転車通勤中
・食事は糖質制限中。MEC食&高脂質食。ボトルでプロテイン・EAA&メガビタミン。
・ホットクック 1.0Lで自炊中
・服は制服化済み
・住まいは断捨離してミニマリストへ
・マンガと歴史好き
(特に世界史へ進攻中)
これから、やりたいこと――。
・英語で読み書き
・古武術介護
・小笠原流礼法
・楽天ポイ活
・積み立て投資