全18巻、たっぷりと落語の世界にひたった。
落語漫画の常として、主人公が落語業界で右住左住するのが縦軸、作品中で使われる噺の紹介や解説が横軸となっている。
また、この作品に新しさを感じるのは、 主人公が保育園の保父(正式の、ではないが)だったり、すぐ上の 先輩が兄弟子ではなく姉弟子だったり、付き合うことになる彼女が同じ落語家だったり(しかも自分よりも才能がある)、師匠の奥さん、おかみさん(呼び方これで良かったか?)が後妻でよく出来た先妻にコンプレックスを持ちな がら健気に頑張っているところだったり。
物語のなかで、女性の噺家が「女性落語家」はいても「おばあちゃんの落語家」はまだいない、 おじいちゃんの落語家はたくさんいるのに、自分がその第一号になる、と宣言しているシーンがあったけれど、なるほど、現実の世界でもおばあちゃんの落語家はまだ見たことがないことに気づいた(少なくとも笑点には出ていない)。
浪曲や講談の世界では女性率が高そうだし存在するのかな?
もちろん落語は保守的な世界なので、女性の落語家をよく思わない古参の噺家はいるのだが、こうした女性の視点が入ることによって落語業界の見え方もけっこう違ってくる。
少なくとも以前に読んだ「寄席芸人伝」とはだいぶ雰囲気が違う。
もっとも芸人伝の世界は昭和時代が舞台であったが――。
落語漫画のもうーつの魅力は、落語の噺のあらすじを教えてくれることで、全18巻も読んでいると、いくつかの落語作品も知るようになってくる。
とは言っても、正直、この「サゲ(オチのこと、なぜかカタカナ表記)」のどこがおもしろいのか、 よく分からないところがあったり、和歌の教養がないと理解でなかったり(あの「ちはやふる」の和歌だ)、作品がもうSFのように荒唐無稽だっ たりする。
ちなみに、こちらは「ちはやふる」現在の最新刊――。もう44巻になっている。そろそろ読み返すかな。難関まで読んでたっけ……。
主人公も物語のなかで悩んでいるのだが「文七元結」などは、 父親のために吉原へ身を売る娘や、娘がわが身を売って作った金を通りすがりの自殺志願者に気前よくくれてやる父親がいたりと、とても「こんな奴ぁいねぇ」なのだが、これを名人が物語ると泣かせる人情話となってしまう。 これが芸の力と言うやつか――。
それにしても落語の世界に出てくる人たち、特に長屋の住人たち、 ご隠居さん、与太郎、熊さん、八つぁんたちは優しい。
けっこう小ずるかったり、とんまだったりするのだが「基本いい人(バクマン。でもこの人物評が出てたなあ)」。
意識は高くない代わりに、やたらと人を攻撃したり足を引っ張ったりはしないし、どれだけ自分ががんば っているか我慢しているかを主張したりはしない。
特に新型コロナウイルス騒ぎ以来、いやその以前から、なんだか世の中がギスギスしていると感じていたけれど、コロナ禍によってさらに加速してしまった気がする。
だからこそ、人は寄席へ行って、ご隠居さんたちの春風のような世界にひたりたくなるかもしれない。
これから寄席へ行ってみようとまでは思わなかったけれど、落語の噺はもっと知りたくなってきた。
荒無稽な落語の世界と何でもありな漫画は相性が良いのかもしれない。
【プロフィール】
夢とか夢中になれることは特に無いので、嫌いなこと、やりたくないことを回避するライフスタイルと、がんばらないためのライフハック がテーマ。
空いた時間はKindle読み上げで本を聴き(週1~2冊)漫画を読んでいく生活(週50冊)。
・片道1時間の自転車通勤中
・食事は糖質制限中。MEC食&高脂質食。ボトルでプロテイン・EAA&メガビタミン。
・ホットクック 1.0Lで自炊中
・服は制服化済み
・住まいは断捨離してミニマリストへ
・マンガと歴史好き
(特に世界史へ進攻中)
これから、やりたいこと――。
・英語で読み書き
・古武術介護
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