「怪作」を読んでしまった、と言う印象だ。
モデルとなったジョゼフ・フーシェからしてフランス革命やナポレオン台頭の激動の時代をあらゆる権力者から生き残った政治家だ。「カメレオン」とも「風見鶏」とも呼ばれたそうな。
当然、世間の評判も歴史上の評判もよろしくない。けれども、自分の場合、「潔く散る」人物よりも、しぶとく生き残るサバイバーが好きなんである。
例えれば、三国志だと諸葛亮孔明よりも司馬懿仲達、日本の戦国時代だと、武将では細川幽斎のようなタイプだ。
シリーズを通して読んだことは無かったので読んでみたいとは思ってたけど、かなり古い作品だし(約30年前ぐらい)、人気があった訳ではなかったので、再読は諦めていたが、つい最近、電子書籍化されてることを知り、全巻、思い切って買ってしまった。
ジョゼフは本人が言うように、常に多数派に属し、自分の政敵を倒すときにも表には出ないようにしていた。権力者には疎まれながらも有能さから手放されなかった。
政治以外では、強力な警察を組織したことで知られている。明治維新後、警察を組織して「日本警察の父」と呼ばれた川路利良が手本としたと言うエピソードが司馬遼太郎の作品で紹介されていたことが印象に残る。
そうだ、確かこの作品でジョゼフ・フーシェに興味を持ったんだった。
川路利良は仲の悪い同僚から、ジョゼフ・フーシェは変節漢だぞ、そんな奴を尊敬するのか? と笑われて、「おいは警察を作ることだけ考えてるでごわす」みたいなことを言っていた。
話がそれたついでに、この川路利良、明治維新の文明開化の頃を舞台にした漫画に良く出てくるようになった。
だいたいが新撰組生き残りの斉藤一、改名して藤田五郎の上司役として出てくる。
話を「静粛に、天才只今勉強中!」に戻そう。
全巻一気読みしてみると、フランス革命やナポレオンやジョゼフ・フーシェに関しての印象がガラリと変わった。
フランス革命といえばフランスだけではなく世界史の中でも輝かしい偉業のはずなんだけど、実際にそれが起こってる現場にいれば、ただみんな訳も分からず大騒ぎしてバタバタしているだけのようだ。次にギロチンにかけられるのは自分かもしれないと脅えながら――。
また庶民からすれば、王制が廃止されようが革命が起ころうが、日々の生活には何の関わり何もないことなのであった。パンの値段がバカ高くなって、手に入らなくなったという心配の方が大きい。これはフランス革命が終わってナポレオンの時代になっても変わりはなかった。
ジョゼフは裏でコソコソと立ち回る人間なので、議会や戦争で活躍するわけでもない。このため物語は、フランス革命やナポレオンの時代を、一歩引いたところから眺めているような感じで淡々と進んでいく。
そしてジョゼフも、他の物語では蛇のような陰湿なキャラとして描かれることが多いけど、「静粛に、天才只今勉強中!」では飄々としたキャラクターとして描かれている。
栄光のナポレオン―エロイカ (1) (中公文庫―コミック版)
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もともと僧籍にあり、学校で物理学を教えていたという。ジョセフにとっては政治というものも単なる力学で、ただ作用と反作用があるだけのものだったのかもしれない。
フランス革命やナポレオンが好きな人にはオススメ! マニアックなところで川路利良のファンにも。いるかな(笑)。
全11巻――。
最後は気の良い愛人とのんびり暮らしたようです……。
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