図書館に『へうげもの(全25巻)』が入ったので、ぽろぽろと借りて読んでいる。順不同で、棚に返却されたものから手に取って借りている。多少、順番が前後するけど、1巻から順番に読もうとすると、時間ばかりかかってしゃーない。何しろ、一回につき5冊までしか借りられないのだ。そもそも、順番通りでなくても充分に面白い作品だ。
- 作者: 山田芳裕
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/01/23
- メディア: コミック
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このマンガ、戦国時代を舞台に、茶の湯と数寄に夢中になった武将「古田織部」が主人公。武人と言うよりも、文化人くくりの人物だ。ちなみに、千利休の弟子である。
連載中は、ピアスをつけた信長が話題になって、確か朝日新聞に取り上げられた記憶がある。
個人的には、具志堅用高そっくりの加藤清正がツボだった(笑)。虎退治した豪傑のはずが、妙に人間味のある清正になってる。ちょっちゅね!
読んでみると、古田織部は、師匠である利休とは異なる、独自路線を行こうとしてる。
茶の湯の師匠「千利休」はストイックなミニマリストで、弟子の「古田織部」は100円ショップで掘り出し物を見つけて喜びそうな感じーー。https://t.co/VozzJpXPWJ
— らくだ (@rakuda951) 2019年1月22日
利休が 「甲乙丙」で言えば「甲」、「ABC」で言えば「A」だったとすると、古田織部は、「乙」であり「B」を目指した。
最高のものよりも、「乙(オツ)なもの」を良しとし、「へうげもの(ひょうきん者)」を目指したのだ。思わずニヤリとしてしまう「一笑」を貴んだ「笑福」の世の中を作ろうとしている。
連載当時よりも、今はギスギスした世の中になってるし、織部のユーモアは、さらに貴重になってる気がする。利休の美意識は、かっこ良いけど、何とも疲れそうだ……。
このマンガを読むまで、よく落語に出てくる「オツなもの」が古田織部の由来によるものだとは知らなかった。ついでに語ると、微妙に歪んだ曲線の「とっくり」や「ぐい飲み」も古田織部が考案したものらしい。
利休が端正で完璧なものを志向したとしたら、古田織部は、微妙に崩れたり歪んだりして可笑しげなものを喜んでいたようだ。現代に生まれてたとしたら、ダメージジーンズなどが好みだったかもしれない。仏像フィギュアとかガチャとか、好きそうな感じだよな〜。
自分も、ミニマリストに憧れて断捨離したりしたけれど、あまり徹底できず、中途半端に甘んじている。そんな自分を、どこか情けなく思っていたけれど、無理にストイック過ぎて窮屈な思いをするよりは、オツなもの、おかしみのあるB級で良いのかもしれない、と思うようになった。
ブランドもので、隙のないトータルコーディネートは、かっこ良いけど息が詰まる。ファストファッションや100円ショップの掘り出し物でミクスチャーするぐらいで充分なのかも。古田織部がB級グルメの祖である、と言ったら唐突すぎるだろうか。森永卓郎さんあたりと親和性が高い気がする。
- 作者: 森永卓郎
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/02/28
- メディア: 単行本
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そういえば、古田織部に関しては、司馬遼太郎先生も短編『割って、城を』を書いている。こちらは、ややダークな印象。茶碗をわざわざ自分で割って継ぎを当てて、自分の作品として取りこんでしまう。そんな織部の美意識を、どこか冥(くら)く歪(いび)つなものとしてとらえていた。
- 作者: 司馬遼太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1969/12/17
- メディア: 文庫
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それでも、意外なことに、マンガのひょうきんな織部、司馬遼先生のダークな織部、どちらのラストシーンも、すごく似通っているのだ。
ラストシーンは、おそらくは史実とは違うのだろう。それは、作者が、「こうであって欲しい」と願ったものだ。少なくとも、異色の漫画家と国民的作家の二人にそう思わせる何かが織部にはあるのだ。もちろん、自分も、読者として、こんなラストが史実であって欲しい、と願ってやまない。
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