思い切って司馬遼太郎の街道をゆくシリーズ全43巻を買ってしまった。Kindleで約27000円ほど。自分としては勇気の要る出費だった。まあでも27000円ほども出せば、このシリーズを全部読み終わるまでたっぷりと楽しむことができるわけだ。そう思えば安いかもしれない。
司馬さんの本は大体読んできたけれど、このシリーズに手を出してなかったのは、全43巻という量の多さに加えて、小説と違ってかなりアカデミックな内容なんじゃないかと恐れを抱いていたからだ。
ところが読み始めてみるとそんなことは全くなくて、エッセイというよりも、物知りで面白い親戚のおじさんの話を聴いてるような感じ。司馬遼太郎さんは座談の名手だったと言うけれど、本当にそうだったんだろうなぁ。
自分の場合、Kindle読み上げ機能を使って、読むのではなく「聴いて」いるわけだけど、文章の語り口が、聴く読書にジャストフィットしている。
ちなみに、街道をゆくシリーズは、もちろん紀行文なんだけど、実際に目で見たことよりも、その土地に関して司馬さんが読んだ本や、その土地が持つ歴史について司馬さんが思いを馳せたことなどについて書かれていることが多い。
司馬さんの場合、あるテーマについて大量の本や資料を読み込み、現地で取材に行く時は自分の想像や考えが正しかったかどうか確認するためだったというエピソードを聞いたことがあるけれど、このシリーズを読んでいるとまさにうなずけることばかりだ。
例えば、この「近江散歩、奈良散歩」では、徳川家の武将井伊直政などが取り上げられていて面白かった。
徳川家の忠臣、また「井伊の赤備え」など勇猛な印象があったけど、その人となりについてはほとんど知らなかった。
同じ徳川家の武将である本多平八郎忠勝などは歴史ゲームの世界でほとんどターミネーターみたいになっているけど、井伊直政はあまり目立たない感じ。
司馬さんの「座談」によれば、戦だけでなく、政治家としても、行政官としても優秀で、その孫の直孝も出来物だったことが分かる。
これまでノーマークだった武将だけれど、井伊直政を主人公にした小説でも読んでみようか。
その他、近江の武将浅井長政がなぜ織田信長を裏切ったのかと言う話も面白かった。
浅井長政は信長と義兄弟ということもあって対等なつもりでいたようだったけど、むしろ織田家の武将たちは、自分たちと浅井長政を対等に見ていたようだった。
信長と同盟を結んでいるはずの徳川家康が実際は信長にこき使われているのを見て、このようになってはたまらないと思ったのが理由のひとつでは、と指摘していた。
なかなかに頷ける話だ。現代のサラリーマン社会でも似たような話がありそう。現実には損得や利害よりも、むしろ感情的な理由で歴史は転がっていくのかもしれない。
こんな感じで小説からこぼれ落ちたような小ネタが次々と語られる。
割と話題があっちゃこっちゃと飛ぶこともあるけれど、実際に世間話を聴いているようで、リラックスして聴くことが出来るのがありがたい。
全43巻、週に一冊読んだとしても、1年近く楽しむことができる。やっぱり安い買い物だ。
【プロフィール】
嫌いなことやりたいことを回避するライフスタイルとがんばらないためのライフハック がテーマ。
空いた時間はKindle読み上げで本を聴き(週1冊)漫画を読んでいく(週50冊)。
・片道1時間の自転車通勤中
・食事はMEC食からEAA&メガビタミンへ移行。糖質制限中。
・ホットクック 1.0Lで自炊開始
・服は制服化済み
・住まいは断捨離してミニマリストへ
・スマホはiPhoneからPixel 3a XL へ移行
・マンガと歴史好き
(特に世界史へ進攻中)