今回は9巻まで一気読みした。あまり縁のなかった鎌倉時代。有名な割には、よく知らない「元寇」。同時に分かる作品だ。「一生懸命」ではなく「一所懸命」なのだ、と。
元寇だって、社会科の授業では、モンゴルが二回やって来たけど、二回とも神風が吹いたらもうお終い。鎌倉武士は勇敢に戦いました、で終わり。
当たり前と言えば当たり前だけど、モンゴル側にだって色々ある。
モンゴル民族単独ではなく、モンゴルに降伏した民族の連合軍だ。先に降伏したものが優先されるクラスカースト? はあるし、服属して良い地位をとろうとする者があり、反抗的な者もある。抜け駆けする者もあれば、戦いに消極的な者もある。
日本側にだって、家族のために命懸けになる者がいれば、家族にために裏切りする者もいる。
様々な者を呑み込んで生き物のように戦が動いていくのだ。
このような戦のバックヤードも面白かったけど、それ以上に舞台となった「対馬」の魅力にも圧倒された。
十年位前に用事で福岡に行った時、暇をもてあまし
て町中を散歩していると小さな石垣を見つけました。
看板には元寇防塁とありました。かつてこの国が存在するか消滅するかがこの石垣の形作る華奢なライン一本にかかっていたのです。
しかし今では見る影も無くひっそりと、それは大学か
何かの敷地の片隅に横たわっていました。自分はそのギャップに燃え続けます。
自分が一番燃えたのは蒙古上陸の浜で今でも行われている「鳴弦の儀」だ。鎧武者が海に向かって並んで、海に向かって弓を射る。燃えるな~。
対馬の森の奥深くにある金田城も燃える。元寇の時代をさらに遡って古代の頃、防人が築いたという立派な石垣。この城にこもって蒙古と戦ったのはフィクションらしいが、古代にこんな城が作られて、今なお森の奥深くに存在しているというのが凄い。
本筋とは関係ないのでさらりと描かれていたけど、津島は内湾が入り組んでる島で、島中央部を西から東へ抜けるときは、一部、陸の上を、船を綱で引っ張って通り抜けたという。
世界史で、○○の戦いとかで、船を陸の上を運んで奇襲したって話がなかったかな。「海皇紀」でも似たようなネタがあった。何から何まで燃えるなぁ。
対馬、行ってみたくなったな。
物語は、9巻ラストでは押し寄せる蒙古大軍に皆殺しにされそうな雰囲気が濃厚。悲惨なラストになりそうだ。
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でも、次シリーズの博多編が始まってるので、少なくとも主人公は生き残りそう。
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そもそも、よく考えたら対馬編は元寇全体から見れば単なる局地戦なのだ。そんな単なる局地戦にこれだけのドラマを詰めこんだ作者の力量に敬服!
正直、ファーストシーズン最終巻をこれから読むのが辛い。あれだけ躍動していたキャラクター達が次々と死んでいくのを見なければならないような予感で……。
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最後に――。
物語の登場人物は、返事をするときに「エイ!」と言う。たまに「オウ」とも言う。「エイエイオウ」のエイ? 検索したけど、よく分からんかった。
これは戦場で武士が「エイ」と返事だけでなく、姫様が貴人(安徳天皇?)に返事する時も「エイ」なのだ。
返事ひとつで、この物語が戦国時代ではなく鎌倉時代なのだ、と分かる。なんか良い! 雰囲気が伝わってくる。「神は細部に宿る」のだ。
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