この頃は1,000円の床屋へ行くようになってしまった。
正確には税込で1,080円。
クレジットカードは使えない。
小銭が出る店だ。
早いし、手軽だ。
待ち時間も少ない。
もともと、平日に休みが取れたときや、仕事帰りなど、客がいないときに寄るので、ほとんど待つことはないのだが。
予約を取って3,800円払ってた頃が、すっかり遠くなってしまった。
そういえば、もっと高い店にも通ってたこともあった。
男のエステみたいな感じの店だった。
そんなこともありましたね、て感じだ。
そんなこんなで、1,000円の床屋へ月一回ぐらい、ちょこちょこと通っても、以前よりは、だいぶコストダウンしている。
流行るわけだ。
子どもの頃の床屋と言えば、月曜火曜かならずいっせいに休む大名商売だったけれど、あっという間に競争の原理に飲み込まれてしまった。
当時の行きつけの床屋も、それでつぶれてしまったっけ。
安くて早くて気軽で、いいことづくめのファスト床屋だけど、一度、ひどい目にあったことがある。
平日に休みが取れたとき、スーパーへ買い物に行ったら、同じ建物内にある1,000円カットハウスが空いていた。
店員一人に客一人。
間もなく終わりそうである。
予定外だけど寄ってみた。
しかし、なんだか妙に時間がかかる。
10分をうたっていて、長引いても15分あれば終わるはずなのに終わらない。
ようやく終わったら、お客はおばあちゃんだった。
娘らしき人が迎えに来た。
おばあちゃんは認知症の人っぽかった。
今どきの風景だなあ。
ゆっくりやってあげてたのかな? と思いつつ席に着いた。
刈り上げない程度に短くして、あとはお任せで、とお願いした。
ヘアースタイルについては聞かれても、よくわからない。
普通の床屋に通ってた頃、眉毛をどうするか聞かれてうろたえたことがある。
理想の眉毛って……。
こち亀の両さんみたいに、男らしく1本につながった眉毛にあこがれるけど、リアルな世界では難しそうだ。
それはさておき、店員のハサミさばきは、なんだか、たどたどしい。
おまけに、今どき昭和な感じの七三分けにしてきた。
髪の毛をべったりと寝かせてくる。
なんだか、鼻の下にちょび髭をつけたら、アドルフみたいである。
特にこだわりはないとはいえ、あんまりな感じだ。
文句言っても、どうしたらいいのか聞かれても困るし、さっさと退散した。
とりあえず、七三分けを手櫛でぼさぼさにする。 すると、けっきょく、いつもと代わり映えしないようだった。
やれやれ。
限界ハウス、ダメ家事男子。プロフィール
空き家一歩手前の限界ハウスで「健康で清潔な最低限度の生活」を目指し、ストレスフリーな毎日を目指して試行錯誤中のへなちょこ家事男子。